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中国二重帳簿に内在するリスクについて解説します。中国では「発票(領収書兼請求書)」に基づいて売上及び費用を計上する「発票主義」により作成しますが、日本では発生主義による財務諸表の提出が必要です。そのため、会計上の誤謬が生じやすいのです。こちらについて今回解説していきます。

具体的な事例

日本法人甲社の100% 中国子会社である A 社は、過去十数年にわたり中国の税務局に提出する「税務用 FS 」と親会社の連結決算のための「連結用 FS 」を作成してきました。

数か月前、日本本社による内部監査で連結用FS に記載されていた売掛金および在庫の金額が、実地棚卸金額よりも過大であることがわかり、会計上の誤謬が発覚しました。

さらに、中国の外為管理規定が禁ずる日本本社に対する借入金 と売掛金とを相殺するコンプライアンス違反行為が判明しました。

発票主義と発生主義の差異に基因する二重帳簿

A社が毎月中国の税務局に提出する財務諸表は「発票(領収書兼請求書)」に基づいて売上及び費用を計上する「発票主義」により作成します。一方、上場会社である日本本社には、発生主義による財務諸表の提出が必要なため、 A 社は、やむをえず二種類の会計帳簿を作成していました。

A社は中国の増値税法の規定により、現金入金または発票発行日をもって収入計上を行いますので、会計上の要請に基づく発生主義に基づく財務諸表と 異なることがあります。しかし二種類の会計帳簿の作成は煩雑であることに加え、次のようなリスクが潜んでいます。

  1. 中国の企業所得税過少申告のリスク中国の企業所得税法上は、発生主義に基づき収益認識することと定められています。したがって、増値税専用発票を発行しているかどうかとは無関係に、発生主義に基づく会計処理が必要です。増値税申告用の財務諸表上の当期利益を基礎として企業所得税を申告する場合、過少申告になる可能性があります。

  2. 監査法人の外部監査を受けていないリスク税務用FS が税務局等への提出に先立ち会 計監査を受けているのに対し、連結用 FS の中国会計士にいる監査は省略されることがあります。この場合には、銀行や取引先に対する残高確認書類の取得、在庫および固定資産の実地棚卸の立会などの監査手続きが行われていないため、会計上の誤謬が明らかになりにくい傾向があります。

  3. その他コンプラアインスリスク上記(2)と同様な理由で、中国固有の外為・税関コンプライアンス違反などが見過ごされるリスクがあります。例えば日本本社に対する売掛金と借入金の相殺は外貨管理規定違反行為となり、税務用 FS には計上できませんが、外部監査を経ていない連結用 FS には、相殺後の数値が計上される例が見受けられます。

対応策

実務上は、次の二つの手法のいずれかを採用することで複数帳簿の作成を回避することができます。

  1. 増値税 FS をベースに、発生主義に基づく会計上の修正を加え連結用 FS を作成する方法

  2. 連結用 FS をベースとし、増値税 申告上は「発票未発行売上高」を区分して入力する方法

 

日本本社は、中国子会社のコンプライアンス上の誤謬が発覚すると、即座に会計上の不正と結 びつける傾向が見られます。中国の企業風土の中で、「紅包 商業賄賂 」や「小金庫 裏金庫 」などは、仕方がないと勘違いする中国担当者も存在します。そのような誤解が、現地トップマネジメントの不正防止意識レベルを低下させるおそれがありますので、注意が必要です。

◆ 情 報 提 供 :太陽グラントソントン(グラント・ソントン 加盟事務所)

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