中国当局は、外国からの直接投資を積極的に呼び込むために、旧来の会社計算規定を改め、新たな会社法制を採用しました。具体的には、2020年1月1日より、『外商投資法』(以下、「本法」)及び『外商投資法実施条例』(以下、「本法条例」)を実施し、従来の「中外合資経営企業法」、「中外合作経営企業法」及び「外資企業法」から成る、いわゆる「外資三法」を廃止しました(本法42条)。
背景
中国当局は、外国からの直接投資を積極的に呼び込むために、旧来の会社計算規定を改め、新たな会社法制を採用しました。具体的には、2020年1月1日より、『外商投資法』(以下、「本法」)及び『外商投資法実施条例』(以下、「本法条例」)を実施し、従来の「中外合資経営企業法」、「中外合作経営企業法」及び「外資企業法」から成る、いわゆる「外資三法」を廃止しました(本法42条)。
本法31条には、「外商投資企業の組織形態、組織機構及びその活動準則には、2018年10月26日施行の『中華人民共和国会社法』(以下、「会社法」)、及び『中華人民共和国パートナーシップ企業法』等の法律の規定を適用する」と規定されましたので、今後の合弁企業、合作企業、外資企業の利益処分及び利益分配は、会社法の規定に準拠することが明らかになりました。
利益処分のポイント
既に廃止された「中外合資経営企業法実施条例」第76条、「外資企業法実施細則」56条が規定していた準備基金¹、企業発展基金²及び従業員奨励福利基金³(以下、まとめて「三項基金」)は、会社法が規定する法定準備金、任意積立金に置き換わることになりました。
会社法第166条は、会社が利益分配を行う前に、税引後利益の10%を、法定準備金の累計額が登録 資本金の50%に達するまで積み立てるべきことを定めました。法定準備金は繰越損失の補てんに使用します。法定準備金の残高によって補てんしきれない場合には、当期の法定準備金を積み立てる前に、 当期純利益を以て繰越損失を補てんしなければなりません。例えば、前期からの繰越損失が100、期首の法定準備金が80、当期の税引後利益が50の場合、まず、法定準備金80を繰越損失の補てんに充てます。補てんしきれなかった繰越損失20は、当期の税引後利益50で補てんします。この結果、当期の法定準備金繰入額とその残高は、[50-(100-80)]×10%=3になります。法定準備金を積立てた後には、株主会または株主総会の決議により、任意積立金を積み立てることができます。
背景
会社法第34条は、株主の実際払込出資比率だけではなく、全ての株主の合意により決定した比率で 利益を分配することができるとしています。
また、本法条例第46条は、「既存の外商投資企業の組織形態、組織機構が法に従い調整された後、 元の合弁、合作当事者が契約において約定した持分または権益譲渡方法、収益分配方法、残余資産分配方法等は、引き続き約定に従い処理することができる」と規定しています。
したがって、合弁及び合作当事者は、改めて利益分配のルールを決定することになります。
今後の利益分配には、次のような点がポイントになると思われます。
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「外資企業法」が定める準備基金の積立率及び関連する規定は、会社法の法定準備金の積立率の 規定と共通していますが、「中外合資経営企業法」の準備基金は従来から積立率についての定めがなく、董事会が決定することになっていました。今後は、会社法の規定に従い、税引後利益の10%を積み立てることになります。
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三項基金の従業員奨励福利基金は、外資三法の廃止により、法的根拠を失うことになりました。 従業員の集団的福利施設への支出については、会計上費用処理することができると思われますが、一定の手続きを経れば、基金の積立を継続することも可能です(本法条例第46条)。
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廃止された「中外合資経営企業法」第4条は、利益の分配及びリスクの分担は登録資本比率で決定すると定めていました。また「中外合作経営企業法」第21条は、中国及び外国当事者は合作企業の契約により、利益分配及びリスク分担するとしていました。今後は会社法の規定に従い、出資比率だけではなく、全ての株主の合意により利益を分配することができます。
1 会社の欠損填補に用いることができ、日本の利益準備金に類似します。
2 技術改造、固定資産の増設などに使用され、中国会社法の任意積立金と類似します。
3 従業員に対する特別貢献賞与、年末賞与等の従業員に対する非経常的な賞与、集団的福利施設の運営に使用され、利益処分後従業員集団に対する債務として負債の部に計上されます。
◆ 情 報 提 供 :太陽グラントソントン(グラント・ソントン 加盟事務所)