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令和2年度税制改正により、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例が創設されました。これまで国外の中古不動産を購入し、その収益を上回る減価償却費を計上することによって生じる不動産所得の損失を、給与所得等と損益通算することによって所得税を節税するスキームが多用されてきました。会計検査院は、「平成27年度決算検査報告」において、この節税スキームを問題視しており、これに呼応する形で国外中古建物の不動産所得の損失を、給与所得等から控除すること(損益通算)に制限が加えられました。

 改正の背景

高額給与所得者が、海外の中古建物を購入し節税するスキームがこれまで多く用いられてきました。米国や英国などの堅牢な建物の場合、資産価値がさほど経年減価せず、中古建物であっても高い価値が保たれています。これらの中古建物の減価償却は、国外のものも日本のものも、同一の耐用年数が用いられます。しかも法定耐用年数の全部を経過した資産の場合、簡便法により、法定耐用年数の20%に相当する年数で減価償却することができます(耐令3①二)。

したがって、国外の中古建物を購入した場合、その建物の取得価額を実際の使用可能期間よりも短期間で費用化できることになり、その結果不動産所得が損失となれば、給与所得等と損益通算することによって所得税を減少させることができます。そのため、高額な給与所得を得ている個人などに人気の節税スキームとして用いられてきました。

なお、国外中古建物の譲渡時において、建物の減価償却が終わっている場合には、その分だけ譲渡所得は大きくなりますが、分離課税であるため総合課税に比べて税率は低く、トータルで考えても税務メリットのある手法となります。

 

改正の内容

  1. 適用対象となる国外中古建物

令和2年度税制改正により、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例が創設されました。改正後は、国外不動産所得の損失のうち、耐用年数を「簡便法」または「一定の書類添付がない見積法」で計算した国外中古建物の減価償却費は生じなかったものとみなされます(措法4143①、②)。これにより、その損失の金額は、他の国外不動産等から生ずる所得と損益通算することはできても、国内の不動産から生ずる不動産所得とのいわゆる所得内通算及び不動産所得以外との所得との損益通算ができないことになります(措法4143②二)。

この「一定の書類添付のない見積法」とは、中古建物の耐用年数をその用に供した時以後の使用可能期間の年数とする方法ですが(耐令3①一)、次のイ又はロの書類により、その使用可能期間が適格であることの確認ができる建物は除かれます(措規18242①一)。

  • その建物の使用期間をその建物が所在している国に基づく耐用年数に相当する年数としている旨を明らかにする書類
  • 不動産鑑定士等がその建物の使用可能期間を見積もった旨を証する書類

 

  1. 損益通算が制限される国外不動産所得の損失の金額

生じなかったものとみなされる額とは、「国外中古建物の減価償却費」に相当する額のことで、具体的には以下のように計算されます。

  • 減価償却費100円≦損失額200円(措令2663①二)の場合

損失額200円のうち国外中古建物の減価償却費の金額100円が、生じなかったものとみなされます。

  • 減価償却費200>損失額100円(措令2663①一)の場合

損失額の全額に相当する金額100円が、生じなかったものとみなされます。

これにより建物の減価償却費相当額を必要経費に算入した国外不動産所得の赤字は、国内の不動産から生ずる不動産所得とのいわゆる所得内通算及び不動産所得以外との所得との損益通算ができないことになります(措法4143②二)。

 

  1. 国外中古建物を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算

この生じなかったものとみなされる額は、譲渡所得の計算上、その不動産の取得費から控除されませんので、その分譲渡所得は圧縮されることになります(措法4143③)。

 

※ 情 報 提 供 :太陽グラントソントン(グラント・ソントン 加盟事務所)

 

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