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国際税務ニュースレター 2020年11月号

 今回のテーマ:コロナ禍により一時帰国した海外出向者の課税関係

 新型コロナウイルスの世界的な流行により、多くの企業が海外出向者の一時帰国措置をとっています。日本に一時帰国した場合の海外出向者の給与に係る所得税の取り扱いについては、以下の規定が適用されるものと考えられます。

 

所得税法の取扱い

日本の所得税法上、居住者とは国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます(所法2①三)。一方、非居住者は居住者以外の人をいい(所法2①五)、国外において継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合には、その人は非居住者と推定されます(所令15①)。

よって、1年以上の出向契約等により海外へ出向した者は、出国の日から非居住者となり、たとえ一時帰国をした場合においても、出向契約が解除等されない限り、原則的に非居住者とされます。

非居住者は、国内源泉所得(日本国内で働いたことに対する給与等)のみが日本の課税対象となります(所法5②、7①三)。

 

・租税条約の取扱い

日本が諸外国と結んでいる二国間条約の多くに、給与所得に係る短期滞在者免税(いわゆる183日ルール)の規定があります。

米国との租税条約を例に挙げますと、次の要件を満たせば他方の国(一時滞在している国)での課税が免除されます(日米租税条約142)。

①当該課税年度において開始または終了するいずれの12か月の期間においても他方の国に滞在する期間が合計183日を超えないこと

②報酬が他方の国の居住者でない雇用者またはこれに代わる者から支払われるものであること

③報酬が他方の国に存在する雇用者の恒久的施設によって負担されるものでないこと

つまり、出向先(米国法人)が支払う給与については、出向者が日本に一時帰国している場合であっても、滞在日数が183日以内であれば、日本における所得税は免除されます。

 

・課税関係

下記前提を元にいくつか例を挙げ課税関係を整理します。

 

【前提】出向先(米国子会社)が出向者に給与を支払う以外に、出向元(日本親会社)も留守宅手当を支払う場合

 

1.出向者が日本に一時帰国して183日以内に出国する場合

出向者は一時帰国中も非居住者なので、国内源泉所得のみが日本の課税対象となります。

一時帰国中に米国子会社から支払われる給与については、リモートワークにより米国子会社に対して労務を提供していても、労務の提供場所が国内ですので、国外払いの国内源泉所得となりますが、短期滞在者免税が適用され、日本における所得税は免除されます。

出向元が支払う留守宅手当については、短期滞在者免税の上記②の要件を満たさないため、非居住者への給与支払として、出向元は20.42%の源泉徴収義務を負います。

出向者は米国居住者なので、米国で全世界所得につき所得税が課されるものと考えられます。その際、日本で源泉徴収された留守宅手当に係る所得税額について外国税額控除を受けることができます(ただし限度額等一定の制限があります)。

 

2.出向者が日本に一時帰国して183日以上経過した場合

出向者は一時帰国中も非居住者なので、1と同じく国内源泉所得のみが日本の課税対象となります。さらに、短期滞在者免税の①の要件を満たさないため、国内法どおりの課税関係が生じます。

一時帰国中に米国子会社から支払われる給与については、リモートワークにより米国子会社に対して労務を提供していても、労務の提供場所が国内ですので、国外払いの国内源泉所得となります。この給与は所得税の源泉徴収の対象とはされないため(所法212①)、日本で分離課税の確定申告を行う必要があります(所法172)。

また、出向元が支払う留守宅手当については、短期滞在者免税の上記②の要件を満たさないため、非居住者への給与支払として、出向元は20.42%の源泉徴収義務を負います。

出向者は米国居住者なので、米国でも全世界所得につき所得税が課されるものと考えられます。その際、日本で確定申告納付し、また源泉徴収された所得税額について外国税額控除を受けることができます(ただし限度額等一定の制限があります)。

 

 

お見逃しなく!

コロナの終息が遅れ、日本への一時帰国が1年超の長期に渡る場合であっても、出向者は出向契約が解除されるまでは、非居住者としての推定を受け続けるのかという疑問が生じます(所令15①一)。もしも、一時帰国中のリモートワークによる労務の提供場所が、出向者の生活の本拠と認められるような事実関係が生じていれば、住所を有しないことの推定は覆されるものと思われますので(所法2①三、所基通2-1)このような場合には、出向者が、出向元又は出向先のいずれの居住者とされるかの判定は困難とならざるを得ないと考えられます。

 

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