海外資産(国外財産)の相続は大変?手続きについて

親族を亡くし、その故人(被相続人)が海外に不動産などの財産を持っていた場合(国外財産)ってどんな手続きになるのか?複雑なのか?などと不安になりますよね。

ここでは、もしも国外財産を相続した場合、当記事では、もしも国外財産を相続した場合、慌てなくてもいいように海外資産の相続手続きを解説していきます。

国際相続とは?

故人の財産に国外財産が含まれている場合、国内財産とは扱いが異なります。

日本国内ではなく、国境をまたいだ相続のことで、国外財産を相続するケースや故人が外国籍の場合のことを「国際相続」といいます。

もっと簡単にいうと故人(被相続人)、相続人、財産のいずれかが国外にある場合の相続のことです。

※詳しい日本の相続法の適用基準は、こちらの記事(相続税がない国ってあるの?海外移住出相続税がゼロになる?)を参考にしてください。

国外財産ってどんなものがある?

  • 海外の不動産(海外不動産投資など)
  • 海外の銀行預金(故人がかつて海外に住んでたり、老後に移住したりして海外預金がある人など)
  • 海外の証券会社や銀行で管理している外国企業の株式や債券
  • 海外の動産(海外にある価値のあるアート作品、骨董や家財など)

国外財産を相続すると国内相続よりやはり計算方法や手続きなどが少々複雑なのが事実です。それぞれの国やケースによって手続きの方法が異なるので、国外財産所在地(国)のルール(法律)の知識や現地とのやり取りにおける語学力、交渉力、書類作成力などが必要になってきます。

全ての手続きをご自身でされるのは、ハードルがとても高いのですが、手続きをプロにお願いする前に基礎知識だけでも知っておきたいですね。

国外財産を相続する場合、どこの国のルール(法律)が適用される?

国際相続の場合に、どの国の法に従うのか?は、各国の法律で決められています。

国際間の判断基準(準拠法)の決め方は、国際相続の場合国によって異なります。具体的には相続統一主義」と「相続分割主義があります。

日本の場合、原則として故人の国籍が基準になる相続統一主義を採用してます。

故人(被相続人)が日本人であれば日本の法律が適用になります。

相続統一主義は、相続の種類で区別せず、全ての相続を国籍がある国の法律もしくは、住所がある国の法律で決める考えのことです。

日本のように故人(被相続人)の国籍にする国は、韓国、オランダ、イタリア、ドイツなどがあります。

故人(被相続人)の国籍を基準としないで、故人(被相続人)生前の最後の住所を基準とする国(スイスやデンマークなど)もあります。

相続分割主義とは、相続に関する国際間のルール(準拠法)を動産と不動産に分けて、動産については被相続人の国籍や住所を準拠法とし、不動産については不動産の所在地の法律を準拠法とすることです。

アメリカ、イギリス、フランス、中国などで採用されています。

なので、海外にある不動産を相続する場合は、不動産がある国によって、その国の法律が適用される場合もあるので要注意ですね!

海外の不動産評価はどう判定するの?

相続税を計算するときの財産価値の基準となる不動産評価の計算方法は、日本と海外では異なります。

日本では、国税庁が公表している税金を計算するときに基準となる土地価格(路線価)に土地面積をかけて出した数字や建物の評価を決める(固定資産税評価額)によって計算されます。

海外では、日本固有の「路線価」は無いですし、「固定資産税評価額」も存在しない国もあるので、不動産の売買価格や鑑定士もしくは取引業者が作成した価格表などを用いて計算することが多いです。

不動産評価を不動産屋さんに依頼

売買価格を査定してもらうには、現地の不動産屋さん数社へ対象物件の売却額を問合せたりするのもOKです。それが、市場価格となります。ただ、その場合は、1社にお願いするのではなくて数社に依頼するのがいいでしょう。その方が、より正確で信頼度のある海外不動産評価を国税庁に提示することができます。

国外財産を相続したときの現地での手続きはどうすればいい?

大変なプロベート手続き

故人(被相続人)の国外財産を相続した場合、日本の手続きとは異なり裁判所を通して相続手続き(プロベート手続き)を行います(このプロベート手続きを採用している国は、アメリカ、シンガポール、イギリス、オーストラリアなどがあります)。

プロベート手続きが完了するまで裁判所が財産を管理し、例え肉親の財産でも相続人は、財産の受取も処分も不可能です。

プロベート手続きに必要な書類は、現地の言葉に訳した宣誓供述書や死亡証明書などです。そして、プロベート手続き完了までに、数か月から数年かかり、その間、弁護士費用もかかります。

プロベート手続きを避ける方法

こんな面倒で時間もお金もかかるプロベート手続きは、できればしたくないですね。

でも、相続人が故人(被相続人)の国外財産を相続した際、プロベート手続きをしない方法があります!それは、「共同保有」と「信託」です。

共同保有(Joint Tenacy)は、国外財産を夫婦の共同資産にしておくことです。もし、仮に先に夫が亡くなったとしても、自動的に妻が国外財産を継ぐことができます。

特に、アメリカ、欧州、香港、シンガポールなどでは、争族にならないように、受益者を決めておく信託を活用することが多いです。

信託とは、生前に国外財産の次の所有者(受益者)を決めておくことです。財産を次の所有者(受益者)に信託することは、富裕層でなくても、非常に一般的です。

プライベートバンクでは、財産を信託化させることで、生前に財産の次の所有者を決めておくことで、財産が迷子にならないようにすることを勧めています。

生前に財産を信託することで受益者を決めておき、財産の所有者を明確にしておくことをおすすめしています。

海外の信託については、また別の回に、解説していきます。

相続人のために生前にできることって?

国外財産の相続って色々と面倒そうですね。

いずれにせよ、終活といいますか、生前にしっかりと自身の財産について整理が必要ですね。いわゆる、日本でも少し活用され始めている、エンディングノートの活用です。これも、また別の回に、解説していきます。

ただ、事故などで元気な人が突然故人(被相続人)になってしまう場合もあります。だから、財産整理に年齢など関係ないですね。

相続人が困らないように、遺産トラブルを回避するためにも財産目録を作成しておくことも大切ですね。

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