「日本は相続税が高いし、贈与しても贈与税がかかってしまう。だから、財産を海外に持って行ってから贈与して税金を逃れよう!」という感じかもしれませんが、海外移住や財産を国外に持ち出して節税対策を考える人が増えてきているようです。
ただ、日本政府は、この税金逃れ対策をするために、都度、税法を改正しているので、国外に財産を持ち出しても節税対策にはならないです。
そこで、今回は、贈与税について見ていきます。
贈与税は何のための税金?
財産をあげた人(贈与者)と受贈者の住んでいる国や国籍によって、納税の扱いが異なります。大きく分けて2つあり、全世界すべての贈与財産が贈与税の対象になる人(無制限納税義務者)と、国内財産の贈与のみが贈与税の対象になる人(制限納税義務者)です。
居住無制限納税義務者
全世界(国内・国外)の贈与財産が贈与税対象となります。贈与税は、受けた人(受贈者)がその住所地を管轄している税務署に対して申告を行います。
もし、贈与財産が国外にあっても、贈与者が国外在住者であっても、受贈者が日本に住んでいれば、贈与税が課税されます。
【居住無制限納税義務者の対象受贈者】
- 受贈者が、日本に定住している
- 受贈者が、一時居住者(※)で、贈与者が日本定住している
※一時居住者とは、贈与時前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の人のことです。
非居住無制限納税義務者
受贈者が日本に住んでいなくても、全世界の贈与財産が贈与税の対象になる場合もあります。該当するかどうかのポイントは、日本国内に住所を持っていたタイミングです。贈与が発生した日から数えて10年以内に日本国内に住所があれば「非居住無制限納税義務者」となります。
【非居住無制限納税義務者の対象受贈者】
- 受贈者が国外在住の日本国籍で、贈与時点の開始前10年以内に日本国内に住所があった
- 受贈者が国外在住の日本国籍で、贈与時点の開始前10年以内に日本国内に住所がない人で、贈与者が日本定住者
- 受贈者が国外在住の外国籍で、贈与者が日本定住者
居住制限納税義務者
受贈者が贈与時点で日本定住で、上記の「居住無制限納税義務者」に該当しない人
非居住制限納税義務者
受贈者が贈与時点で国外在住で、上記の「非居住無制限納税義務者」に該当しない人
生前贈与のメリット
相続税を逃れるために生前贈与しても贈与税が発生し、節税にならないですね。
でも、生前贈与をすることによって、メリットもあるんです。
相続トラブルの回避
相続時に親族間で、相続内容でもめてしまうことがあります。遺言があっても、解釈の違いなどが起こることもあります。
でも、生前に贈与しておけば、贈与者から直接受贈者に、意向を説明が出来るので、もしも、親族間でもめ事がおこっても贈与者が対応することで、トラブルの解消に繋がります。
暦年贈与で基礎控除を受ける
1月1日から12月31日までの1年間で贈与された総額から110万円までなら課税されないので、毎年贈与を110万円まで行い、節税することができます。
でも、仮に1000万円を10年間(10回)に分けて贈与すると定期贈与とみなされ課税されるケースがありますので要注意です。
暦年贈与をされる場合は、不定期で定額ではなく、贈与の度に贈与契約書を結ぶことをお勧めします。
まとめ
国外に財産があっても、贈与者及び受贈者が海外在住でも、相続税と同様、贈与税が発生することをお分かりいただけたと思います。
悲しいことに相続時にもめてしまうご家族もいらっしゃいます。節税も大事ですが、親族間の相続時のもめごとを避けるために贈与を行うというのも一つのアイデアですね。
贈与するにしても相続するにしても、国外に財産がある場合は、事前の準備や対策が必要ですね。